症例:【顔面神経麻痺(ベル麻痺)】合計11回の施術で医師より「完治」の診断
当院に来院された、出産後に顔面神経麻痺を発症された症例をご紹介します。
患者さま情報
30代 女性 東京都
発症から来院までの経緯
出産から1ヶ月後に顔面神経麻痺を発症されました。
出産は出血が多く、体力的に厳しい状況だったとのことです。
病院では入院せずステロイド薬の投与を受けられ、柳原法では18/40点と「中度の顔面神経麻痺(ベル麻痺)」と診断されました。
退院時には26/40点、筋電図は54%と改善傾向は見られたものの、まだ鼻や口元が思うように動いていない状態でした。
医師からは「やれることはやりました。あとは半年〜1年かけてゆっくり治すイメージで様子を見ましょう」と言われたそうです。
しかし、ご本人の気持ちとしては「そんなに治るのをゆっくり待ちたくない」「不安なので早くしっかりと治したい」という強い思いがありました。
そのため、ご友人からの紹介を受けて、当院に来院してくださいました。
施術のポイント
早期かつ確実な回復を目指し、以下の点を主な施術のポイントとしました。
- 首肩こりの改善: 顔面神経に豊富な血流を届けるため、首や肩の緊張を取り除くアプローチを行いました。手足のツボの他、腰、背中のツボのも使いました。
- 表情筋へのアプローチ: 表情筋の動きを確認したところ、顔の中でも若干の違いがあり、特に鼻すじ、頬、口元の動きが弱いことがわかりました。
一方で目、眉、おでこは動きが強い状態でした。
後々、顔の歪み感が現れるリスクを想定し、鼻すじの動きを取り戻すことに重点を置いてアプローチしました。初回施術後から鼻すじの動きの改善が確認できました。
経過
2回目: ご自宅でのセルフケア(温めること)にも積極的に取り組んでくださり、改善傾向が見られました。鼻すじや頬の動きに変化が現れました。
3回目: 目を閉じた時の強さが出るようになりました。「ウー」と口をすぼめる動きができるようになり、うがいの際に水を口に溜められるようにもなりました。
4回目: 頬の上がりが順調な一方で、重たさも感じるとのことでした。寒い時期であったため、温めを継続するよう改めて確認しました。
5回目: 周囲からは「もう麻痺しているのが分からない」と言われるほど順調に回復しました。鼻すじの上がり(ほうれい線の付け根部分)が、ほぼ麻痺していない側と同じレベルまで戻りました。
6回目: 顎先に軽く痺れる感じがあったとのことでした。
7回目: 顎先の軽い痺れる感じはなくなりました。
8回目: 頬のこわばりを自覚されました。動きを確認すると、少し頬の動きが重く見えたため、セルフケアを2種類行うようアドバイスさせていただきました。毎日しっかりと取り組んでくださった様子でした。
9回目: セルフケアを継続したことで、頬のこわばりは消失しました。
10回目: 鼻筋にごくわずかな硬さが残る程度で、動きに支障はほとんどなく、完治と言って良いレベルまで回復しました。
11回目: 気になる点はなく、病院で診察を受け「完治です」と診断されました。これにより、当院での鍼治療も終了としました。
顔の動きの変化(まとめ)
- 柳原法18点(中度麻痺)から治療開始。
- 鼻すじ、頬、口元の動きが改善。
- 目を閉じる強さや口をすぼめる動きができるように。
- うがい時に水を溜められるようになる。
- 頬のこわばりや顎の痺れも一時的に出現したが、セルフケアと施術で改善。
- 最終的に鼻すじの上がりもほぼ左右差がなくなり、病院で「完治」と診断。
考察・まとめ
今回の症例は、出産という大きな身体的負担の後に顔面神経麻痺を発症されたケースです。
当初より中程度の顔面神経麻痺(柳原法18点)であり、予後良好なタイプであると想定されましたが、患者さまから、「不安なので早くしっかりと治したい」という強い希望がありました。
当院では、そのお気持ちを尊重し、「スピーディーな改善〜終了」を共通の目標に掲げました。
顔の筋肉に対する必要以上の鍼やマッサージはリスクを増やす可能性がありますが、適切な施術は回復を促すと考えます。
施術では、首肩こりの改善による顔面神経への血流促進、そして特に動きの弱かった鼻すじや口元などの表情筋へのアプローチを重点的に行いました。
患者さんご自身もセルフケアに積極的に取り組んでくださったことも、早期回復に大きく貢献したと思います。
結果として、スピーディーかつ後遺症なく無事に完治まで導くことができました。
顔面神経麻痺について詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
