【低音障害型感音難聴】耳鳴り、耳詰まり、音が響く… 首、あごの緊張と自律神経を整えて落ち着いた症例
「低音障害型感音難聴」と診断され、耳鳴り・音の響きなどでお悩みだった方のご相談症例を紹介いたします。
患者さま情報
60代 女性発症から来院までの経緯
来院の2ヶ月前、たまたまスマートフォンの音を片耳ずつ当てて聞いてみたところ、右耳の音が全体的に小さく、ラジオのようにこもって聞こえることに気づきました。
特に低い音が聞こえにくく、「なんだかおかしいな」と思いながらもしばらく様子を見ることに。
1ヶ月経って耳鼻科を受診したところ、「低音障害型難聴」との診断。ステロイドを6日間使用することになりました。
聞こえは少し戻ってきたものの、以下の状態が続いていました。
・音質の違和感(低い音はあまり聞こえない)
・日によっては耳が詰まるような感覚(症状には波がある)
・右耳を押さえて口を閉じて「うんうん」と言うと、耳の中で“ぼうぼう”と響く
なかなか改善しない状況が続いて不安を感じ、ご主人から「鍼を受けてみたら?」と勧められたのをきっかけに当院へご相談いただきました。
体の状態
右の顎まわり〜耳の横、側頭部、首肩に強いこわばりがありました。
首(胸鎖乳突筋)・咬む筋肉(咬筋)の緊張が目立ち、右の肩甲骨まわりにも強い硬さ。
腰はすべり症があるため、背中の筋肉も全体的に張りやすいタイプです。特に腰の下の方が強いこわばりです。
脈の状態からも、自律神経は“がんばりモード(交感神経優位)”である様子が出ていました(脈が早く、強く打つ)。
経過
1〜5回目
健側(左耳)が聴力の落ちている右耳を補う形で敏感になり、音が強く響く日がありました。
鍼の翌日は落ち着くが、時間が経つとまた出てくるという波のある時期です。
首・背中・後頭部・手のツボ(合谷)など、自律神経と耳のつながりを意識した施術を中心に行いました。

聴力検査の結果を見ると、右耳(赤い線)の低音がしっかり聞こえていない様子がわかります。
この段階ではまだ大きな変化は見られませんでした。
6〜10回目
一時的に低音域が40dB → 60dBへと悪化。
耳鳴り・耳の詰まった感じ、音が響く感じも増えて不安も大きく、辛い時期でした。
漢方薬(サイレイトウ)、気持ちを落ち着ける薬、筋肉をゆるめる薬を併用することで睡眠は改善。ただ、耳鳴りは続いていました。
この時期は以下の施術も加え、体全体の緊張・不安を下げる方向で施術を続けました。
・耳のまわりのツボ
・あごの関節のこわばりを取るツボ
・自律神経を整えるための無血刺絡療法

右耳の低音の聞こえが下がっていくことで、左右のバランスが大きく崩れていました。
この“左右差”が強くなると、脳が音をうまく整理できなくなり、耳鳴りが強く感じられたり、音が響いて聞こえたりします。
この時期は、聞こえ方も落ち着かず、一日ごとに調子が変わる時期でした。
11〜13回目
ここから聴力が安定し、改善に向かいます。
低音域は60dB → 40〜30dBまで回復。
耳鳴りは「普段は気にならない」まで軽くなりました。
薬はすべてやめていますが、状態は安定を維持。
首の反応から“腎のポイント”にも刺激を加え、耳の回復に関わる深い部分の調整も進めました。
あごの関節・側頭部・合谷などを組み合わせ、無血刺絡で自律神経のバランスを整えるようにしました。

低い音の聞こえが、40dB前後から30dB台まで戻ってきました。
日常の音が以前より自然に聞こえるようになりました。
現在(14回目〜)
耳鳴りの調子はかなり落ち着いてきています。
朝起きたときに「あれ?今日は耳鳴りしてない!」と思うくらいで、静かな部屋で確かめても、以前よりずっと小さくなっています。
気圧の変化で多少の波はあるものの、もう不安に振り回される感じはありません。
まだ音が響くような感覚はありますが、全体としては確実に回復に向かっています。

「悪くなっても、それが続くわけじゃないってわかってるから落ち着いていられる」と笑顔でお話しされています。
まとめ
耳の症状が続くとき、まわりの環境、背景まで考える必要があります。
この症例のように首やあごの筋肉が強くこわばっていたり、自律神経のバランスが乱れていたりすると、耳の不調が出やすくなるためです。
「首やあごの緊張 → 血流の低下 → 内耳のむくみ → 聴こえの変化」という流れにつながっていきます。
したがって、耳だけを整えようとするのではなく、首・あご・肩など“耳を支えるまわりの環境”をゆるめてあげることが、回復の鍵となります。
気圧や体調によって波はありましたが、根気強く鍼灸施術を続けたことで安定した回復の流れに乗ることができた症例でした。
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