症例:【顔面神経麻痺】中等症(筋電図18%)からの回復

顔面神経麻痺を発症され、回復を目指された40代女性の症例をご紹介します。

患者さま情報

40代 女性 神奈川県

発症から来院までの経緯

口の上に違和感を感じた翌朝、顔に麻痺が出てきました。

病院を受診したところ、「顔面神経麻痺」との診断。

ベル麻痺かハント症候群かは検査を行いましたが特定しきれず、おそらく「ハント症候群」の可能性が高いだろうとのことでした。

筋電図検査では18%「重症である」(一般的には10%以下にまで減少している場合を指します。この数値は予後不良の可能性が高いとされます)とのことでした。

その後、お薬を服用しながら様子を見ていましたが、発症から1ヶ月が経過しても回復が見られません。

病院では「3ヶ月から半年くらいで動き出すかもしれないので、引き続き様子を見てください」と言われている状況が続いていました。

この先本当に動き出すのか、後遺症が残るのではないかという強い不安を抱え、SNS(𝕏の投稿)で当院を見つけて来院してくださいました。

経過

  • 初回〜5回目:
    来院時は柳原法で2点程度と、非常に重い麻痺の状態でした。

    この期間は動きに変化なし。

    病院からは「顔面神経減荷手術」を勧められましたが、抵抗と怖さがあり、手術を選択しないと決められていました。


  • 5回目〜10回目(発症から約2ヶ月):
    眉間に力が少しずつ入るようになり、目の周辺がピクピクと力が入り始めるといった変化がありました。


  • 10回目〜20回目(発症から約3〜4ヶ月):
    さらに回復が進みました。頬が上がるようになり、笑顔を作ることができるようになりました。

    安静時の表情は周りから見て「麻痺があるのか分からないね」と言われるようになりました。

その後も、眉毛やおでこの動き、上唇の動きなど、さらなる回復と後遺症の管理を目的に継続して施術を受けられています。

施術のポイント

発症から1ヶ月経過してもまだ動き出していないという状況を踏まえ、以下を施術のポイントとしました。

  • 顔面神経の早期再生を目指す

    まずは「1日でも早く動き出すこと」を患者さん自身が強く望んでいたため、ひとまずこれを直近の目標としました。

    そのため、麻痺している顔面部だけでなく、耳の近くのツボ、首、肩、背中、顎関節など、顔面神経に関連の深いまわりの部位からも多角的に血行促進を狙った鍼を行いました。

    特に慢性的な疲労と力が入りやすい(緊張しやすい)タイプという自覚があることから、リラックスするような施術、首・肩コリ、麻痺側の胸鎖乳突筋(首の横の筋肉)の耳に近い部分の強い緊張・コリ緩和に重点を置きました。


  • 共同運動のリスク管理

    一方で、共同運動・こわばりが出現する後遺症のリスクが高いことを当初よりお伝えしていました。

    出現を最小限に抑え、悪化を防ぐためのアプローチ(顔のマッサージ指導)やセルフケア指導を行い、毎回の施術の度に確認を行いました。

考察・まとめ

今回の症例は、深刻な顔面神経麻痺を発症されたケースです。

病院で手術も勧められるほどの状況であり、患者さんは後遺症や回復への強い不安を抱えていました。

重症ということは顔面神経の損傷が大きい可能性が高いと言えます。

そのため回復に時間がかかったり、共同運動・こわばりなどの後遺症が残りやすいのです。

当院では、まずは「1日でも早い神経再生を促すこと」に重きを置きました。

患者さんの心情を想像したときに「まずは動き出さないことには不安が拭えず、鍼灸施術に対しても前向きに取り組むのは難しいのではないか」と感じたから、ということが理由としてあります。

ただし、今後、起こりうる共同運動・こわばりのリスクを理解・共有しておくことが前提となります。

強いマッサージや、強い顔面部への刺激は絶対に避けるべきです。

ここまでの経過を見ると、まだすべての動きが戻ったわけではありませんが、回復の兆しが見られ、笑顔などの機能的な改善が得られたことは大きな成果と言えます。

今後も共同運動の悪化を防ぎつつ、残された麻痺の改善を目指していくことになります。

お顔は大切なパーツですので、最善を尽くして患者さんの笑顔を取り戻すサポートができたらと思います。



顔面神経麻痺についてもっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次