症例【顔面神経麻痺(不全型ハント症候群の疑い)】顔の動きがほとんどない状態…柳原法4点→30点まで回復
患者さまの情報
40代 男性
発症から来院までの経緯
ある朝、右の耳周辺の痛みと軽いめまいとともに、右側の顔面神経麻痺が起こりました。
病院を受診すると「不全型ハント症候群の疑い」との診断。
ステロイド治療を受けましたが、改善が進まず不安を感じていました。
麻痺の改善が乏しいことから、形成外科的手術の可能性も説明されたものの、患者さん自身は積極的な治療を希望しない選択をされました。
麻痺の改善がなかなか実感できず不安が強まったため、発症から3週間のタイミングで当院へご相談に来られました。
来院時には、
- 笑顔が作れない
- 口がうまく閉じられない
- 話しにくい
- 涙が出るが乾きやすい
といった状態で、日常生活や仕事での不便を強く自覚されていました。
他者が見ても違和感が少ない状態になることを直近の目標として鍼灸施術をスタートさせました。
当院での施術
初回〜数回目(発症から約3週間)
来院時は、顔の動きがほとんど出ていない状態。
当院での評価では柳原法4点でした。(まぶたを閉じる動きがわずかに見られる程度で、それ以外の表情の動きはほとんどない)
この時期は、回復の流れを妨げないことを大切にし、刺激が強くなりすぎないよう配慮しながら鍼施術を行いました。
施術では、顔まわりだけでなく首や肩のこわばりも確認し、緊張している部分を和らげることを目的に、優しい刺激で行いました。顔の動きを無理に引き出すような施術は行っていません。
ご自宅では、顔・首・肩を温めるケアを中心に、力を入れずに優しく触れることを、朝晩の無理のない範囲で続けていただきました。また、強く顔を動かすことや表情のトレーニングは行わないようお伝えしました。(のちのち後遺症が現れるリスクになるため)
2〜5回目(発症から約3〜4週間)
少しずつ顔の動きが出はじめました。
柳原法12点(安静時の左右差に加え、まぶたを閉じる動きや片目をつぶる動き、「イー」と歯を見せる動きや口笛の動きが、少しずつ出てきている)となりました。
まぶたや口の動きが一部みられるようになった一方で、「朝に顔が重く感じる」「違和感がある」といった訴えも出てきました。
この時期は、動きを増やすことよりも、回復に伴って出てくる不快感を軽くすることを目標に関わりました。施術では、顔全体の緊張をやわらげることを中心に、状態に応じて優しい刺激での調整を行いました。
ご自宅では、これまでの温めるケアを続けながら、無理のない範囲での表情筋のマッサージや口腔内のマッサージを取り入れていただきました。
どれも大事なリハビリですが、いずれも「やりすぎないこと」を意識して行っていただいています。
6〜7回目(発症から約3か月弱)
顔全体の動きが大きく改善。
評価では柳原法24点(目や口まわりを含め、顔全体の動きが大きく改善している状態)となりました。
日常生活での不便さはかなり減り、表情も自然に近づいてきました。
この段階では、施術内容やセルフケアを大きく変えることはせず、これまでの関わりを継続しました。
回復のペースを乱さないことを大切にしながら、通院の間隔も少しずつ調整していきました。
8回目(発症から約3か月)
柳原法30点。(目を閉じる動きや片目をつぶる動きもしっかりと行えるようになった状態)まで回復。
仕事の取引先から顔の麻痺を指摘されることもなくなりました。
日常生活は問題なく過ごせている状態でした。
一方で、強く目を閉じたときに、頬や口元が一緒に動く様子がごく軽くみられました。
また、首や肩のこりが強いときに、この動きが出やすい傾向もありました。
そこで、この時点からは「さらに良くすること」よりも、「これ以上悪化させないこと」を目標に切り替えました。
施術では、こわばりやすい部分を中心に、動きのクセが強まらないよう配慮しながら行いました。
ご自宅では、鏡を使って力が入りすぎていないかを確認しながら顔を動かすこと(ミラーバイオフィードバック)や、疲れや緊張が強いときには無理をしないことをお伝えしました。
現在(発症から約3か月半時点)
柳原法30点を維持しており、日常生活やお仕事に大きな支障はありません。
疲れや寒さ、首や肩の緊張が強いときに、軽い違和感を感じることはありますが、その都度セルフケアで落ち着かせることができています。
当院では、回復した動きを保ちながら、後から困る症状が出ないようにすることを目的として、フォローを続けていけたらと考えています。

この症例からお伝えしたいこと
顔面神経麻痺は、回復の途中での関わり方の見極めがとても重要です。
ずっと同じことをしていれば良いという訳ではなく、神経の回復の段階に応じて、気をつけるポイントが少しずつ変わってくるためです。
今どの回復段階にいるのか、次はどういったことが起こりうるのか。その見極めに関しては施術者の知識と経験が求められるところかと思います。
この患者さんの場合も回復の段階に合わせて施術やリハビリ、セルフケアの内容を適宜調整したことが、安心して生活できる状態につながったのではないかと考えています。
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