症例:【顔面神経麻痺】柳原法4点から鍼灸とリハビリ連携で改善したケース
当院に来院された、顔面神経麻痺を発症、後遺症や回復への不安を抱えていらっしゃった50代女性の症例をご紹介します。
患者さま情報
50代 女性 東京都
発症から来院までの経緯
最初は首の痛みを感じており、耳鼻咽喉科を受診しましたが原因は分からず、痛み止めを処方されました。
その後、顔に麻痺が出現したため脳神経外科を受診したところ、「顔面神経麻痺」と診断されました。(ベル麻痺かハント症候群かは特定されず)
脳神経外科では投薬治療と顔のマッサージ指導を受けられていましたが、後遺症が残るのではないか、完全に回復できるのかといった不安を強く感じていらっしゃいました。これらの不安から、鍼灸治療を受けることを決め、当院に来院されました。
施術のポイント
施術では、顔面神経の機能回復と後遺症の軽減を目指し、以下のことに重点を置きました。
- 顔面神経に対する血行促進: 麻痺している顔面部だけでなく、顔面神経に関連の深い首、肩、背中、顎関節など、周辺部位からも多角的に血行促進を狙いました。これは、顔面神経へ栄養を供給し、回復を促すためです。
- 顔面部へのアプローチ: 麻痺している筋肉や神経に対し、直接的または間接的に働きかける鍼施術を行いました。発症初期には過剰刺激にならないよう十分注意をしながら、後遺症が出始めた頃には顔面部の筋肉のこわばりをゆるめる目的です。
- 後遺症軽減のためのセルフケア指導: 施術効果を高め、後遺症を最小限に抑えるため、ご自宅でできる顔のマッサージや温めなどのセルフケア方法を具体的に指導させていただきました。
経過
- 初回: ご来院時の麻痺の程度は、柳原法で4点程度の重い状態でした。
- 2回目〜3回目: 発症前からの首の痛みが出ている状態でした。顔の麻痺については、これ以上の悪化は止まったように感じられました。(顔面神経麻痺は発症から1週間程度は症状が進行し、悪化することがあります。その後、徐々に回復に向かうことが多いです)
- 4回目〜5回目: 病院でCT検査を受け、腫瘍などによるものではないことが確認できました。麻痺の改善の兆候として、以前よりもストローで吸えるようになったと感じられました。一方で目の乾燥が強く見られました。
- 6回目〜10回目(発症から約1ヶ月): この頃の柳原法は20点程度まで回復が見られました。一時的に耳の痛みがぶり返しました。また、耳の奥でポコポコという音が鳴るとの訴えがあり、病院に相談したところ、耳に水が溜まっている可能性があるとのことでした。施術に口腔内のマッサージを追加するとともに、ご自宅でのセルフケアとしても指導し、耳周りの状態改善も図りました。
- 11回目〜15回目(発症から約2ヶ月): 小鼻の膨らみが出せるようになるなど、さらに細かい動きの改善が見られました。一方で、顔のこわばりを感じることが出てきました。この頃から病院でのリハビリ(1〜2ヶ月に1回のペースで自宅でのセルフケア指導が中心)も開始されました。
- 16回目〜25回目(発症から約3ヶ月): 柳原法は30点程度まで回復が進みました。顔のこわばりや、ピクピクするといった不随意運動(共同運動の兆候)が出現し始めました。ご自宅での温めやセルフケアは継続して取り組んでいらっしゃいました。
- 26回目〜35回目(発症から約半年): 顔面神経麻痺の回復のペースは鈍化してきたように感じられました。
- 36回目〜46回目(発症から約7〜9ヶ月): うがいをした時に以前よりも口からの漏れが少なくなっているなど、機能的な改善が見られました。共同運動は少し見られるものの、悪化することはなく、一定のところで止まっている状態でした。
その後も、症状の維持やさらなる改善、共同運動の管理などを目的に、継続して施術を受けられています。
考察・まとめ
今回の症例は、首の痛みから始まり、顔面神経麻痺を発症された50代女性のケースです。
初回ご来院時は柳原法4点程度と重い麻痺の状態であり、後遺症への強い不安を抱えていらっしゃいました。早期に病院での治療を鍼灸施術を開始されたことが、その後の経過に影響を与えたと考えられます。
経過を見ると、柳原法4点から20点、そして30点へと改善が見られました。
発症から時間が経過するにつれて回復のペースは鈍化し、共同運動の兆候も出現しましたが、その悪化は一定のところで食い止められている状態です。
顔面神経麻痺の回復には個人差があり、麻痺の程度や原因によって予後も異なります。
初期段階で重度の場合は完全に共同運動を出なくするのは難しいとされています。
鍼灸施術やリハビリテーションによってその程度を軽減したり、悪化を防いだりすることは可能であるため、セルフケアも含めてサポートできればと思っています。
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