【顔面神経麻痺】鍼灸師や鍼灸院によって施術方針が大きく異なる3つの理由とベストな選択肢とは?

顔面神経麻痺でお困りの新規の患者さんからよく言われるのが、

「鍼灸を早く始めたほうがいいのは調べて分かったんです」

でもどんな鍼灸院にかかるのが良いのか分からなかった…」

ということ。


ネットで調べるとさまざまな情報が目に入るようになってる今、むしろ大変に迷いやすい環境にあるようです。

一般的には広く知られてないと思うのですが、同じ顔面神経麻痺であっても、鍼灸師や鍼灸院によって施術方針は大きく異なります。


実は、鍼灸というのは病院のように「どこにかかっても同じような治療(=標準治療)が受けられる」というものではありません。

ただでさえあまり馴染みのない鍼灸、さらにどこでも同じじゃないとなると、「じゃあどうすればいいの!?」となってしまうと思います。


その背景には、主に【3つの理由がある】と私は考えています。

理由がわかると迷いなく鍼灸院を選ぶことができると思いますので、お困りの方はぜひお読みください。

なぜ顔面神経麻痺の鍼灸施術は統一されていないのか?

顔面神経麻痺の鍼灸施術が統一されていない理由

1. 鍼灸の考え方や流派がさまざまだから

まずはこれです。

そもそも鍼灸には、さまざまな流派や考え方があります。鍼灸師の私でもすべてを把握しきれないほど。

キレイゴトに聞こえるかもしれませんが「どれが優れているということではなく、どれも正解のやり方」です。

(ただし、患者さんが納得して施術を受け、満足していただく結果につながれば、です)

さまざまな考え方があると言うことは、鍼灸師それぞれの考え方や流派によって、同じ顔面神経麻痺に対する施術であったとしても使うツボ(およびツボの解釈)、鍼の打ち方、鍼の種類、刺激の与え方などが違うことになります。

「同じ料理であっても味付けや調理法、素材の使い方が料理人によって異なるようなもの」とイメージしていただければ分かりやすいと思います。

そこが鍼灸の奥深さや魅力とも言えますが、統一できない大きな理由にもなっていたりします。

顔面神経麻痺の鍼灸施術が統一されていない理由

2. エビデンス(科学的根拠)の構築が難しいから

鍼灸は西洋医学のように大規模な臨床試験を行い、厳密なエビデンスを積み重ねることが難しいものだったりします。

前述したように、さまざまな流派や考え方があることに加え、一人で院を構えるスタイルが多いというのも大きな理由です(当院もそのスタイル)。はり師・きゅう師は約6割が「自営、フリーランス」の就業形態だとするデータがあります。


この状況が意味することは「大規模なデータの蓄積がなされない」と言うことです。

論文や研究によって「この方法が一番効果的だ」という科学的な証拠(エビデンス)をたくさん集め、鍼灸を「標準化」していく取り組みはなされていますが、まだ一部に留まります。

鍼灸全体に浸透し、「標準化」が基準になるには鍼灸師全体の意識の変化、時間、連携の仕組みが必要だなと感じます。

顔面神経麻痺の鍼灸施術が統一されていない理由

3. 鍼灸師の技術と経験に差が出るから

患者さんの症状を正確に見極め、その人に一番合ったツボを選び、適切な強さで鍼を打つには高い技術と豊富な経験が必要です。

同じ顔面神経麻痺であっても、経験豊富な鍼灸師と初めて施術にあたる鍼灸師では、症状の読み取り方、ツボの選び方、鍼の刺激の加減、患者さんの反応に対する対応能力に大きな違いがあるでしょう。

同じ流派の鍼灸師であれば一定の再現性があると思いますが、あくまでも人間がやることですから「AIのように完璧にいつでも同じ」は限界があって当然です。

「マニュアル」と「個別性」のバランス

ちなみにスタッフが複数人いる鍼灸院においては「施術マニュアル」があるかと思います。

これは施術品質の均一化と一定の成果を保証する上で非常に有効です。

私が鍼灸師になりたての頃に勤めた鍼灸院では「顔面神経麻痺の施術マニュアル」がありました。

鍼を打つ場所、使う鍼の種類、本数、時間、手技のやり方、すべてがキッチリ決められたモノです。

しかし、経験を重ねた今、マニュアルは、あくまで「型」であり、患者さん一人ひとりの複雑な体の状態や、日々の変化にまで完璧に対応できるわけではないこともよく分かりました。

ここで重要になるのが、鍼灸師個人の「経験と知識、そして患者さんを深く理解しようとする姿勢」です。

マニュアルを習得した上で、それを患者さんの個別の状態に合わせて柔軟に応用し、時にはマニュアルにないアプローチを創造する能力が差になります。

AIには真似できない、人間ならではの洞察力と判断力が問われる領域。

これはやはり統一化できるモノではないと思います。

ベストな選択とは

これらが、同じ顔面神経麻痺であっても鍼灸師や鍼灸院によって治療方針が大きく異なる理由です。

以上を踏まえて私が言えるのは、現時点で出されている『エビデンスに基づいた鍼灸施術』がベストな選択、ということです。

理由2. にもある、エビデンスの構築がもっとも時間とコストが必要で難易度が高いことだと思うからです。

現時点で出されているエビデンスというのは、日本顔面神経学会の出している「顔面神経麻痺 診療ガイドライン」に記載されている鍼灸施術のやり方、考え方です。

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残念なことに、エビデンスを無視した情報発信がネット上には氾濫しています。

  • 頻回で過剰刺激を与える施術方針
  • 逆に「たった1〜2本で治る!」とセンセーショナルに謳う(「治る」はNGです)
  • 後遺症を悪化させるリスクがある強い刺激やマッサージを行う
  • 強い電気鍼治療をする
  • 「顔に鍼をしない」ことが他よりも”過剰に”優れていて”唯一無二な方法”であると標榜する
  • 絶対に治ると誤解させる”過激な表現”など…

不思議なものでエビデンスを無視した情報ほど、悩んでいる方にとって魅力的に力強く、印象に残るようです

理由⒈で、「どれが優れているということではなく、どれも正解のやり方」(ただし、患者さんが納得して施術を受け、満足していただく結果につながれば、です)と書きましたが、限度を超えたものは患者さんにとって不利益を与えかねません。

ご自身に合った鍼灸院を見つけるためには、これらの背景を理解していただき、気になる院の方針や実績を詳しく調べてみるのが良いかと思います。

労力はかかりますが、後々を考えたときにご自分で考え、判断することは大切です。

くれぐれも上記のような情報に惑わされないようにしていただきたいと、切に願います。

ご不安がある方はいつでもご相談ください!

鏡を覗き込む女性

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